あなたの子は、あなたの子ではありません。
自らを保つこと、それが生命の願望。
そこから生まれた息子や娘、
それがあなたの子なのです。
あなたを通ってやって来ますが、
あなたからではなく、
あなたと一緒にいますが、
それでいてあなたのものではないのです。
子どもに愛を注ぐがよい。
でも考えは別です。
子どもには子どもの考えがあるからです。
あなたの家に子どもの体を住まわせるがよい。
でもその魂は別です。
子どもの魂は明日の家に住んでいて、
あなたは夢のなかにでも、そこには立ち入れないのです。
子どものようになろうと努めるがよい。
でも、子どもをあなたのようにしようとしてはいけません。
なぜなら、生命は後へは戻らず、
昨日と一緒に留まってもいません。
あなたは弓です。
その弓から、子は生きた矢となって放たれて行きます。
射手は無窮の道程にある的を見ながら、
力強くあなたを引きしぼるのです。
彼の矢が速く遠くに飛んで行くために。
あの射手に引きしぼられるとは、
なんと有難いことではありませんか。
なぜなら、射手が、飛んで行く矢を愛しているなら、
留まっている弓をも愛しているのですから。
カリール・ジブラン
(カリール・ジブラン、佐久間彪訳『預言者』至光社、1998年、pp.25-26.)